A Day.
七時起床。朝食はトースト、スクランブルエッグのせ。八時の占いを見てから家を出る。占いを信じてはいないけれど。定期、ケータイ、タオル持った?弁当を持たせながら母が確認してくれる。階段で必ず振り返る。いってきます。
できるだけ日陰を歩く。柵にヒョウ柄の帽子が引っかかってる。どこから来たのか。坂の上の家には三匹の猫が住んでいる。運がよければ、三匹揃って黒い車の上で伸びているのを目撃することができる。今日は一匹。
駅前で必ずすれ違う眼鏡をかけた高校生は時計代わり。彼は毎朝正確な時間に現れるから、すれ違う場所であと何分か大体予想がつく。毎朝すれ違っていることに彼は気づいているのかな。
イカはタッチしない、浮かせて読ませる。今年に入ってからのマイルール。特に意味はない。最近、近所のおばさんが同じ電車に乗っている。目が合うとにっこりすることにしているけど、同じ扉から乗るのは避けている。なんとなく。
東口へ。エスカレーターは使わない。これも最近のルール。
駅前は毎朝、だいたい宗教の人が立っている。朝からすごいよ。ティッシュは受け取るけどチラシはいらない。朝からチラシ配ってるヤンキーって昼間何してるんだろ。
駅から五分。警備員さんに挨拶。一応、顔を見て必ずするようにしてる。挨拶してきてるのに無視して入ってくのってちょっと変だと思う。灰色の階段、五階まで。キツい、少し。たまにエレベータ。
教室。まだ人半分くらい。両隣も来てないことが多い。左隣は名前がわかるけど、右隣は名前も知らない。白い机。椅子の座り心地はイマイチ。肩が凝るのはこのせいかもしれない。
先生の質は良いと思う。少なくとも、良いと思っていた方が学習効果が上がるんじゃないか。若作りな先生のこと悪く言う声、耳障り。おばさんだけど、笑うとそんなに悪くないし。っていうか、そんなこと言う前に自分の顔、見たら?って思いながら、黙ってる。腰履き、ださいっすよ。それも黙ってる。
午前中の楽しみ。弁当。午後の楽しみ。帰宅。それだけ。
ここのお気に入りは設備がきれいなこと。清掃のおばさんがちょくちょくモップで床掃除してる。トイレは階によって違う香りが置いてあるところも好き。トイレの側の大きい窓も好き。
ロッカーは5062。紫のロッカー。隣のロッカーはいつも無口な男子の。この人は観察対象の一人。下のはコーチのバックの女子。りんごの膝掛けが入ってる。この子はいつも友達と二人で行動してる。
観察対象は四人いる。無口な人ほど逆に気になる。とは言っても、鞄変えたな、とか、髪切ったな、とかそれくらい。友達になりたいと思うほどの興味はない。
帰路につくのは九時過ぎになる。雨が降っていないか確認して、外に出る。
駅前の広い歩道は、最近工事が二つ入った。一つ目の工事の時は丁寧に石のタイルを剥がし、工事が終わると丁寧に元に戻したのに、二つ目の工事では剥がしたところだけ全部黒のアスファルトになった。なんて美的感覚の欠如。工事の都合とか、あるのかな。
帰りは、快速で帰ることもあるし、各駅で帰ることもある。最近、各駅停車は時々違う色が走るようになった。いつもの色のだと、たまにフッと明かりが弱くなるのでそろそろ寿命だと思う。
夜は日陰を気にしなくて良い。このごろ気に入ってるのは、ダーツバーとラーメン屋のある通り道。ラーメン屋は開いてたり閉まってたりする。スープが無くなると閉めるらしい。ヤンキーが銀行から出てパチンコ屋に入っていった。お金は大切に。
夜は猫が居ないことが多い。居るときは道の真ん中で毛繕いをしてるか、こっちをじっと見てるか。
鍵をさして家に入る。父の方が早い。おかえりと言って部屋から出てくることもあるけど、テレビを見てて出てこないことも多い。母もリビングで寝転がってテレビを見てる。二人ともテレビっこだな。他にやること、ないのかな。いいけど。母にただいまって言うと、おかえりって言って食事を温めなおしてくれる。食事の時間が好き。わたしが食事している間、母はダイニングのテーブルからテレビを見る。わたしに「付き合って」くれてるらしい。テレビ、うるさいんだけど。でも、まあ、いっか。