主に冷ちゃんという人の見方が変わったという話。
夕方、習い事のイベントへ。チップスにチーズとサルサをかけたものをたらふく食べながら、外国人を何となく囲んでお話ししたりしたけれど、あんまり話も盛り上がらず、なかなか苦痛な時間だった。圭二が、イベントの後みんなで飲みに行こうって言ってたから、その時間に合わせて和木が来てたけど、圭二は忘れてたみたい。和木がどうなったかは知らない。私は冷ちゃんに誘われて飲みに行くことにしたから。
冷ちゃんは最近彼氏ができたらしい。
冷ちゃんは彼氏を見せたいらしく、私と冷ちゃんの男友達(義明)を彼氏の働いてるバーに連れて行った。ただし、冷ちゃんは義明に何にも話してなくて、彼氏のことを秘密にしたいのか、そうでもないのかよくわからない私は義明と何を話せばいいのか解らなかった。とりあえずドリンクを一杯ずつ頼んだけれど、そのとき彼氏が少々感じが悪く、私にはどうでも良いレベルだったけど、冷ちゃんはたちまち不機嫌になり「何あれ?何であんな態度とるの?」とブツブツ言っていた。DJの流すどうしようもないくらい騒がしい音楽の中やっとのことで会話していたけど、冷ちゃんは大したことは何も話してくれなくて、何のために私と義明は集められたのだろうと思った。特に義明は全くの蚊帳の外で、苦笑いしながら煙草を吸っていた。冷ちゃんは一杯飲み終わると「もう行こう」と言った。義明は急いでジュースを飲み干してた。
連れて行かれた二軒目。一杯飲んだけど、ここでも音楽が爆音でかかっていてまともな会話は成立しなかった。暫くすると冷ちゃんと友達であるオーナーが話しかけてきた。ここで義明が「オーナーと話し終わったら連絡してくれ」と言い残して離脱。冷ちゃんはオーナーの些細なことに腹を立てて、ツンとした態度を取っていた。そんな冷ちゃんにオーナーも怒り気味で、彼氏の店のことは「あんな店」と言っていた。オーナーが居なくなると冷ちゃんは「何でかな?どう思う?オーナーがああ言うってことはやっぱり私利用されてるだけ?」等々とのたまうが、彼氏もオーナーも初対面で何もわからない私は「冷ちゃんが噂を信じるのか彼氏を信じるのか、どちらかしかないと思う」としか言えなかった。
「もう一度彼氏の店に行きたい」というので二人で店を出た。道中、結婚式帰りの男に話しかけられ、これ幸いという感じで冷ちゃんは「おごり?やったー!」「この店で飲もう」と彼氏の店にナンパ男を連れ込んで連絡先を交換したりしていた。大分酔っぱらってきた冷ちゃんは、結婚式の二次会に行くというナンパ男に「一緒にいくー」とすがりつき、チェーンの居酒屋までついていった。
ナンパ男はさすがに二次会の個室とは違う個室に私たちを入れ、暫くすると現れなくなった。ナンパ男がいなくなると冷ちゃんはどこかにメールしたり電話したりして「うん、そう、来て?」と甘い声で囁き、私の知らない男たちを勝手に召還した。冷ちゃんは片方の男にベロベロと絡みつき、ポッキーを食べさせながらキスしたりしていた。いよいよ夜の蝶と化した冷ちゃんを生ぬるく見守りながら、私はジントニックとピーチミルクを飲み、ナンパ男が置いていった新品のカメラを仕舞った。
冷ちゃんがめんどくさそうにケータイを渡すので、見ると義明からの電話だった。義明は真面目に待っていたらしく激昂していたが「冷ちゃんが酔っぱらって困っている」と私が被害者面で事情を説明すると義明は「今から行って怒鳴ってやる」と言った。義明が来るよ、と言うと知らない男たちは退散し、冷ちゃんと私は会計を済ませた。そこで義明がやってきて静かに冷ちゃんを問いつめたが、取って付けたように「ごめんなさい」と言うだけで反省の色がない冷ちゃんを義明は見限ったようだった。
義明は私だけ車に乗せて、三駅離れた私の最寄りまで送ってくれた。
次の日、冷ちゃんに「義明と仲悪くなっちゃって残念だね」とメールすると、長々と「義明のことは前から好きじゃなかった。顔とか生理的に無理。考えが幼い。」などと書かれた返信が届いた。女は怖い。冷ちゃんはギャルっぽい見た目だけど、親切だし、ちゃんと働いてるし、目標もあるし、いい人だと思っていたけど、今はもう信じられない。私だっていつ「本当は嫌いだった」って言われるかもしれないと思うと。