頭良いね、真面目だね、とよく言われた。真面目だねと言われて特に嬉しくはなかったが、学級委員はやった。悪い気はしなかった。
親には愛されていた。良い子でいなさいと言われたことはなかったが、良い子でいたほうが親が喜ぶことは知っていた。愛してくれる人が喜ぶなら自然と良い子でいるようになった。
中学に入ると勉強をたくさんするようになった。運動は嫌いだった。文化部に入ったが、そこまで熱心にやりたいことはなかった。勉強は頭のいい子ならみんなしていたからわたしもした。クラスメイトに点数で勝つと嬉しかったが、いつも勝てない子が何人かいた。自分は二流だと思った。
絶対になりたいものもやりたいこともなかった。だから、いい大学に入ることだけが目標だった。大学に入るのはスタートだ、通過点であってゴールではない、と教師たちは口々に言ったが、どう考えても大学に入ることを目標にするしかなかった。
二流の大学にしか入れなかったが、分相応だと受け入れた。理科が好きだったから理系の学部を選んだ。勉強は嫌いだった。全然面白くなかった。実験が始まって幾許かはましになったがレポートは死ぬほど退屈だった。真面目にレポートを作ったが評価は普通だった。やはり自分は二流なのだ。いつからか高い目標をもつのは辞めた。入っていた部活はきつかったから辞めた。
研究室に入って、少しだけ面白いと思うことができるようになった。作業は面白かったが、新しいことを考えるのは苦手だった。与えられた範囲内で考えるのが精一杯だ。これまで答えは全てWebに書いてあった。なんでもかんでもまずはWebに訊いた。
暇な時間はネットを見て過ごした。ケータイのゲームもなかなか良い時間つぶしになった。やりたくてやってるわけじゃなかったが、やりたいことがなかったからネットとゲームをして過ごした。
気づいたら、何もないと思った。空虚なつまらない女が1人できあがったのだ。これといった趣味もなく、休日も家にいる。世間に関心もない。勉強も好きじゃない。友達は少なく、彼氏もいない。話すことなんか何もない。つまらない女。
勉強はかなりしてきたほうだと思うが、何か重要なことを置いてきたんじゃないかとこの頃よく思う。もっと学ばなきゃいけないことがあったのではないか。どうしてそれができなかったのか。
死ぬ気はないが、何をして生きていくのがいいのか、どうしたら幸せになれるのかよくわからない。きっと凡庸に生きて凡庸に死ぬんだろう、とそんなふうに思いながら、今日も目を閉じる。